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小児科
診療内容

小児科 一般小児科疾患

 当院では一般小児科疾患全般をあつかっています。特に代表的な疾患を挙げてみます。

  • 細菌性髄膜炎
  • ネフローゼ症候群
  • 尿路感染症
  • IgA血管炎
  • 特発性血小板減少症
  • 貧血
  • 熱性けいれん
  • 川崎病
  • アセトン血性嘔吐症
  • 糖尿病
  • 甲状腺機能異常
  • 不明熱

 小児の患者さんの多くは自分で症状を言えません。診察所見から、診断を導き出し、適切な診療を行ってゆきます。

 

細菌性髄膜炎

  • 予防接種や抗生剤の発達のお陰で近年、重篤な感染症は減少しつつありますが、それでも完全に0になることはありません。細菌性髄膜炎は小児の感染症の中ではもっとも重篤なものの一つであり、治療の遅れが命に関わり、また適切に治療が行われても後遺症の残りうる疾患です。症状は発熱・項部硬直・意識障害が三徴候とされますが、低年齢ほど非特異的でなんとなく元気がない、哺乳が悪い、嘔吐、痙攣など症状は様々で急速に状態が悪化することもあります。
  • 検査には血液検査と髄液検査、場合によっては頭部の画像検査などを行いますが、疑われた時点で早期の抗菌薬加療を行います。髄液検査では一般的な塗抹や培養検査に加え、迅速抗原検査キットも使用することでできるだけ早期に原因菌を特定することを心がけています。診断が確定すれば抗菌薬やステロイド治療を行い、免疫グロブリン製剤を併用することもあります。痙攣発作は比較的多くの例で見られますが、神経学的後遺症は急性期にははっきりとしないこともあるので退院後も成長発達のフォローを脳波や画像検査などでしっかりと行います。

 

ネフローゼ症候群

  • ネフローゼ症候群は高度蛋白尿、低蛋白血症、全身性の浮腫が起こる疾患の総称です。いくつかのパターンがありますが、小児に発症するものの多くは微小変化型という型でステロイド治療によく反応し、早期に症状の改善が見込めます。しかし高率に再発を起こすことでも有名で、頻回に入退院を繰り返す例もあり、完全に治癒に至るまでには長期間かかることが多い疾患です。
  • 当院では初発のネフローゼ症候群、再発性のネフローゼ症候群に対してガイドラインに準拠しステロイド治療、免疫抑制剤による治療を主に行なっております。退院後も長期の内服治療が必要となるため、薬が苦手なお子さんに対しては医師・看護師・保育士などで工夫をして飲めるようになって退院していただいています。ステロイド治療に抵抗性のある場合や非常に再発頻度の高い場合など腎生検が必要となる場合にはより高度な医療施設へと紹介させていただく場合もあります。

 

IgA血管炎(ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、アレルギー性紫斑病)

  • かつてさまざまな呼ばれ方をしていましたが現在ではIgA血管炎と呼称されています。全身の小血管(毛細血管や細動静脈)の炎症に基づく疾患で、下肢を中心とした皮疹と腹痛、関節症状を三主徴とします。多くの場合先行感染を認め、溶連菌など細菌、ウイルス感染後に発症するとされています。治療は診断がつけば基本的に痛み止めなどで対症療法を行いつつ自然軽快を待ちます。まれに腸重積や腎障害などの合併症を起こす例があります。腹部症状が強く食事が食べられない場合は入院の上、絶食、点滴で治療を行います。
  • 当院では疑いのある方については、腹部エコー、便潜血検査や血液検査でIgAや凝固第ⅩⅢ因子の測定など行います、治療については症状が軽度であれば外来での経過観察となりますが、一部腹部症状の強い例では入院の上ステロイドでの症状緩和を行います。腎障害に関しては、軽度の場合は経過観察としますが、長期に続く場合や重度の蛋白尿が出る場合にはより高度な医療施設へと紹介させていただくこととしています。

 

特発性血小板減少症

  • 特発性血小板減少性紫斑病は風疹ウイルスやヘリコバクター・ピロリ菌感染を契機に発症する自己免疫疾患の一種です。血小板に対する自己抗体(PA-IgG)が血小板を破壊することで血小板低下をきたし、それにより紫斑が出現します。小児の特発性血小板減少性紫斑病は成人と比較し一過性のものが多く、輸血による支持療法やステロイド治療により軽快することが多いです。血小板低下が著しい場合には全身の臓器への出血をきたすこともあるため、原則入院加療を行います。

 

貧血

  • 小児でも貧血はありふれた疾患で、その中でも大半が鉄欠乏性貧血です。貧血では気力の減退や呼吸苦、動悸、神経発達障害をきたすこともあります。鉄欠乏性貧血では食事習慣の是正がまず第一の治療となりますが、患者さんの食事習慣の改善がみられない場合には鉄剤の内服が必要になります。当院では綿密に血液検査にて貧血の具合をフォローしながら治療を行っています。また稀に貧血の中には、白血病といった血液悪性腫瘍が隠れていることがあります。血液検査にて血液悪性細胞の出現がないかチェックし、白血病の疑いが強い場合には当院と連携している京都大学附属病院や奈良県立医科大学に速やかに転院できるよう調整しています。

 

川崎病

  • 川崎病は1967年に日本で初めて発見された全身の血管に炎症、特に心臓の冠動脈という血管の炎症が特徴的な疾患です。現在になってもまだ原因が判明していません。診断は全身の複数の症状から総合的に判断され、多くの場合には免疫グロブリンという薬を使用することで早期に治癒が見込めます。ただ一方で、グロブリン治療に反応しない例や、治療中に冠動脈瘤という瘤ができることがあり、十分な検査などを行いつつ治療を行い、場合によっては追加での治療が必要となります。
  • 当院では、治療にはまず免疫グロブリン治療を行い、不応例に対してはウリナスタチンやシクロスポリンを使用しています。難治例に対して血漿交換を行なった例もあります。平日であれば毎日、心臓のエコーを専門の技師の手で行うことが可能であり、川崎病で重要とされる冠動脈瘤の早期発見に努めております。冠動脈瘤形成した患者さまに対しては小児循環器医師によるカテーテル検査も実施しておりその後のフォロー体制も整っております。

 

糖尿病

  • 糖尿病は検尿による尿糖陽性、もしくは高血糖に伴う口渇・多飲・多尿、体重減少をきたす疾患です。糖尿病は大きく、インスリン注射が必ず必要となる1型糖尿病(インスリン欠乏症)と、生活習慣の是正や内服コントロールがメインとなる2型糖尿病(インスリン抵抗症)に分けられます。早急に治療を開始しなければ糖尿病性ケトアシドーシスや高血糖高浸透圧性昏睡など死に至りうることもあり、また血糖コントロールの不良は将来的に微小血管障害をきたします。
  • 当院では初診時の診断から、その後の生活習慣に合わせて栄養士や糖尿病専属看護師、訪問看護等と連携しながら食事指導・運動療法、インスリン注射、内服療法等を行っています。
  • 1型糖尿病では治療の主体がインスリン注射ですが、皮下への頻回注射療法だけではなく、インスリンポンプ療法(Continuous Subcutaneous Insulin Infusion:CSII)の導入も行っています。CSIIは継続的にインスリンを皮下注射する器具で、頻回注射療法に比して注射時の疼痛の軽減、インスリンの絶対量の減少、良好な血糖コントロールを期待できる治療です。また最近ではCSIIに24時間血糖モニタリング(Continuous Glucose Monitoring:CGM)を組み合わせたSAP療法(Sensor Augmented Pump)の導入も行っています。

 

甲状腺機能異常

  • 甲状腺機能異常症には甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症があります。それぞれにはBasedow病や亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎、橋本病等、細かい病型が存在します。甲状腺機能異常症を発症すると気力、活動性、消化管機能、心機能、成長・発達等に異常をきたしたりするため、治療の介入が必要です。
  • 当院では甲状腺エコーやシンチグラフィ検査を行った上で、これらの細かい病型の診断し、それにあった治療の介入を施行しています。また甲状腺の腫瘤である場合には当院耳鼻科と連携し、穿刺吸引細胞診を行っています。基本的には内服による治療が主体ですが、必要に応じ放射線内用療法や手術療法を選択します。

 

不明熱

  • 不明熱は発熱が3週間以上続き,かつ少なくとも3回 38.3℃以上となり、1週間の入院精査にもかかわらず診断の確定しないものと定義されます。原因は感染症、膠原病、悪性腫瘍、薬剤に大きく分けられます。
  • 当院の強みとしては不明熱となりうる感染症や膠原病の詳細な血液検査ができること、京都大学を通じ膠原病に特異的な自己抗体の検索が幅広く可能でありまた自己炎症症候群に代表される疾患群に特徴的な遺伝子検索も可能であること、放射線科と連携しCTやMRI、PET-CT等を行って、悪性腫瘍を含めた熱源検索が可能であること、消化器内科を通じ上下部内視鏡検査が可能であること、熱源が特定できた場合には各科と連携し、必要に応じて生検し、病理学的診断を下せることです。
  • 病型診断が下せた時点でそれぞれにあった治療を行いますが、必要があれば、入院の上、高容量ステロイドやステロイドパルス療法、免疫抑制剤治療を施行します。悪性腫瘍である場合には専属の外科医のいる、もしくは放射線・化学療法が可能な病院へ速やかに転院できるよう調整しています。

 

小児科 小児神経

  • 小児期の神経疾患の診療においては、症状の改善と同時に、その児の体や心の成長・発達がうまくいき、もって生まれた力が伸びていけるように長期にわたって手助けしていくことが大切です。
  • 当科では、てんかんなどの発作性疾患を中心に、重症筋無力症や多発性硬化症などの自己免疫性神経疾患や神経筋疾患などに力を入れています。また神経皮膚疾患や先天異常症候群などさまざまな症状を呈する疾患については、他科と協力してフォローをおこなっています。てんかんについては、脳波に加え、MRI、PET、SPECTなどの画像診断を積極的に行い、正確な診断にもとづく治療に努めています。さらに精査が必要な場合は、京都大学医学部小児科などとの連携を行っています。

 

アレルギー疾患

 当院では一般小児科疾患全般をあつかっています。特に代表的な疾患を挙げてみます。

 

 アレルギーとは「免疫学的機序によって開始する過剰反応」のことであり、アレルギー反応を病態として発症する様々な疾患をアレルギー性疾患と総称します。異物を外敵と認識しアレルギー反応を生じるようになってしまうことを”感作”と言い、感作された物質を”アレルゲン”と言います。逆に異物を外敵として認識せず無害なものとして寛容することを”免疫寛容”と言いますが、その免疫寛容の破綻がアレルギー疾患発症のメカニズムに関与しているという考えがあります。

 アレルギー疾患は古くは紀元前ヒポクラテスの時代にも喘息という単語が存在しておりましたが、アレルギーという概念が提唱されたのは1900年代初頭のことであり、医学においては比較的歴史が浅くまだまだ解明されていないことが多い発展途上の医学領域です。

 現代においてアレルギー性疾患患者は年々増多傾向にあり、今後も増え続けると考えられています。ヒトは小児期に多くの異物と初の接触・摂取を経験し、免疫寛容システムがフル活用される時期であり、また皮膚や消化管の異物除去バリア機能が未熟であるため、アレルギー疾患を発症しやすい時期であるというのは想像に難くなく、そのため小児科とアレルギー性疾患は非常に関わりが強いと言えます。

 

アナフィラキシー

概念

 アナフィラキシーは「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応」と定義されます。そしてアナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合をアナフィラキシーショックといいます。アナフィラキシーの多くは急性に発症し、症状は経時的に変化し急速に重症化し、致死的な経過を辿りうるため早急な医学的介入が必要です。その為に今回挙げたアレルギー性疾患の中で最初に記載しました。

 誘因として最も多く見られるのが食物で、その他に虫刺(ハチ)や薬剤も一般的です。一般的な臨床経過はアレルゲンの摂取・暴露から数分~数十分の経過で発症します。ただし1時間以上経過してからの発症も稀ではありません。症状は皮膚症状(発赤や発疹、腫脹、掻痒)、消化器症状(口腔内違和感、腹痛、嘔吐)、呼吸器症状(咳嗽、鼻汁、呼吸困難感)、循環器症状(低血圧、脈拍の変動、不整脈)、神経症状(活気低下、意識消失、尿失禁)等を生じます。多くの場合はこれらの症状を複数組み合わせて発症しますが、全ての症状が同時に出現するとは限りません。

 また治療や経過による症状軽快後も時間をおいて再燃してくる二相性の経過を呈することも少なくありません。(初回発症より72時間以内で、その多くは8時間以内)

検査・診断

 アレルゲン暴露を疑う病歴と臨床症状/経過から診断を進めます。診断基準は2014年発行のアナフィラキシーガイドラインを要約すると

  • グレード2(中等症)以上の症状を2つ以上の臓器別症状で呈するもの
  • グレード3(重症)の症状と他臓器症状(グレード問わず)を1つ以上呈するもの
  • アレルゲン暴露後の急速な血圧低下を呈するもの

 上記3つのいずれかに該当する場合をアナフィラキシーと診断します。急速な全身性の皮膚症状をアレルギー以外で発症することは稀なため、皮膚症状を伴う場合の診断は容易です。しかし時に皮膚症状を呈さないアナフィラキシーも存在するためその場合は診断に迷うことがあります。

治療

 多くは自宅や学校等で発症するため、直ちに救急車等を要請し一刻も早く医療機関を受診します。それまでに行える処置としては、可能であればアレルゲン除去を行います(吐き出す、洗い流す等)。アナフィラキシーの既往がありアドレナリンの自己注射薬を持っている場合や、食物アレルギーなどで発症時用の抗ヒスタミン薬を持っている場合はそれを使用します。低血圧症状(めまいや気分不良等)がある場合は横になり下肢の挙上を行うと良いでしょう。

 以下は医学的介入となります。

  • アドレナリン筋肉注射
     臓器別症状で重症を有する時や循環器症状を有する時に用います。また他治療が無効な時にも適宜用いられます。アドレナリンは昇圧剤として普段は用いられる薬剤ですが、アナフィラキシー時には昇圧効果以外に呼吸器症状・皮膚症状・消化器症状などにも改善効果が期待でき、効果発現も迅速であるため適応症例では早急に使うべき第1選択薬となります。1回の投与で効果が不十分な場合は他治療を併用しつつ5-15分の間隔で反復投与を行うことが可能です。

     患者さんご自身で使うことの出来るアドレナリン自己注射(エピペン)をお持ちの場合には下記を参考に使用して直ちに医療機関を受診して下さい。

  • 気管支拡張薬吸入治療
     呼吸器症状を訴える際に気管支拡張薬の吸入が適応となります。ただし前述のように気管支拡張薬の吸入では症状改善が不十分と判断される場合は上記のアドレナリン筋肉注射を速やかに行うべきです。
  • 抗ヒスタミン薬
     アレルギー反応に関与する化学伝達物質であるヒスタミンの作用を抑える薬剤です。皮膚症状改善効果を比較的迅速に期待できる反面、呼吸器症状や循環器症状等の改善効果は期待できません。
  • 副腎皮質ステロイド(ステロイド薬)
     強力にアレルギー反応を抑える薬ですが効果発現が遅く数時間要するため、アナフィラキシーの急性期症状の改善には効果を期待出来ません。主に二相性の反応を抑える目的で使われることがあります。

 

食物アレルギー

概念

 食物アレルギーとは「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」と定義されています(そのため食物に含まれているヒスタミンや毒物によって引き起こされる反応、食物不耐症は食物アレルギーに含みません)。食事とは原則として他の生物を食材・栄養源として体内に取り込む行為であり、摂取するものは天然物であれ人工物であれ基本的に異物です。特定の食材・食物由来の物質へ感作されアレルゲンとして認識してしまうことが食物アレルギーの原因となります。食物アレルギーにおけるアレルギー反応の多くは特異的IgE依存性反応であり、摂取から2時間以内に反応が生じる即時型反応です。一部では非IgE依存性反応もありますが、その機序の多くははまだ解明されていません。

 一般的な食物アレルギーの経過としては、特定の食べ物を摂取した直後に皮膚の掻痒や発赤や蕁麻疹等の皮膚症状、鼻汁やくしゃみや口内の違和感等の粘膜症状、咳嗽や喉頭違和感や呼吸困難感等の呼吸器症状、腹痛や嘔吐や下痢などの消化器症状、その他神経症状や循環器症状などの急性症状で発症します。多くの場合離乳食などでその食材を摂取し始める頃に発症しますが、初めての摂取の場合でもその前に既に何らかの形で体内で感作が成立していることが多いとされています。多くの場合は児の成長と共に消化機能の成熟や経口免疫寛容の発達等による耐性の獲得を経て、改善傾向に向かっていくとされています。卵や牛乳や小麦などは幼年期のアレルゲンとして大部分を占め、年齢と共に耐性が得えられやすいとされています。一方で甲殻類やソバや果物類などは幼年期だけでなく成人以降にも発症することが知られ、また耐性化が期待しにくいとされています。それらの経過の違いについては未だ機序はよくわかっていません。

検査・診断

 特定の食材摂取に関与してアレルギー様症状を認めた場合にこれを疑います。症状を起こす食品の種類や摂取量、摂取から発症までの時間、そしてその再現性(2回以上同じ食材によるアレルギー発症の病歴など)からアレルゲンを推定していきます。検査としては血液検査、皮膚テスト、経口負荷試験などが一般的です。

  • 血液検査
     血液検査では特定の物質に対する血液中の特異的IgE抗体の量を計測することで、様々な主要アレルゲンへの感作の有無を定量的に評価することができます。採血のみですので患者さんへの負担は少なく安全な検査です。いわゆるアレルギー検査といえばこれを想像する方が多いと思います。
  • 皮膚テスト
     皮膚テストには主にプリックテストや皮内テストがありますが、皮内テストは検査精度やアナフィラキシー反応のリスクなどが考慮され、あまり一般的ではありません。通常はプリックテストにて行われます。特定のアレルゲンが溶けた薬液を介して特殊な針で腕の皮膚を刺し(といっても実際に皮膚を刺して血が出たりするわけではなく、皮膚の深いところに薬液を刷り込むという印象)、即時型反応の有無とその強さを評価します。主要なアレルゲンは既成の薬液として出来合いのものがありますが、プリックトゥープリックテストといって実際の食材を刺してその針でそのまま腕を刺すという検査を行うことで、ほとんどの食材の検査にも活用出来ます。同時に複数のアレルゲンを調べることも出来ます。血液検査と比較するとやや患者さんへの負担はありますが比較的安全な検査です。
  • 経口負荷試験
     経口負荷試験は食材を一つ選んで実際に食べてアレルギー反応の有無を調べます。目的としては食物アレルギーの有無(つまり確定診断)と症状発症の摂取量閾値(どれだけ何を食べればアレルギー症状が出てくるかの限界摂取量)の判定です。確定診断に関しては、血液検査等でアレルギーが疑われたとしても実際に食べて症状が出なければ食物アレルギーではなく、逆に検査で異常が無くても実際に食べて症状が出る場合は食物アレルギーと診断されるため、経口負荷試験は食物アレルギーの確定診断に最も重要な検査と言って過言ではないでしょう。また後述しますがアレルゲン摂取を少しずつ促して免疫寛容を進めてアレルギー耐性の獲得を図る経口免疫療法があります。その際の摂取量閾値を調べることは治療においても欠かせないものであります。

     非常に有益な検査である一方のデメリットとしては、一度に一つの食材しか調べることが出来ないことと、アレルギー反応が誘発されうるという患者さんへの負担とリスクが伴うため慎重に行わざるをえないという点があります。具体的なやり方としては当院では、持参の食材を少量ずつ段階的に増量しながら30分間隔で1-3回程度摂取してもらい、逐一アレルギー発症が無いかの評価していきます。午前中の検査であれば午前一杯、午後の検査であれば午後一杯を検査時間として要します。アナフィラキシー誘発のリスクが高い場合は外来ではなく入院で行うこともあります。

治療

 食物アレルギーの治療には食事栄養療法と経口免疫療法と薬物療法があります。

  • 食事栄養療法
     食事栄養療法は原因アレルゲンの除去が基本となりますが、必要最低限の除去に留めます。アレルゲンであっても食べられる範囲内(調理法や量を調整)の摂取は多くの場合許容されます。小児は成長過程にあるため栄養不足が将来的な予後に大きく影響するため、食材の除去に伴う特定の不足しがちな栄養素(例えば卵ではタンパク質、牛乳ではカルシウム等)を代替食材で補うことが大切です。当院では栄養士による栄養指導も適宜行っております。
  • 経口免疫療法
     経口免疫療法は医師指導のもとで原因食材の摂取を行い、段階的に摂取量を増やしていきアレルギー反応が生じなく、あるいは生じにくくなることを期待する治療法です。

     ただしアナフィラキシーを含めたアレルギー症状を発症するなどの副作用の危険性があります。また普段は安全な摂取量でも、治療の中断・再開後や、風邪や腸炎などで体調不良時にはアレルギー症状が誘発されやすくなるため摂取量を適宜減量する必要があります。治療効果や安全面等も含めて研究的な段階にあり、専門の医師指導のもとで慎重に行うべき治療です。

     当院では経口負荷試験の結果に基づいて自宅での安全摂取量を設定しながら少しずつ摂取量を増やして耐性獲得の誘導を行う緩徐法を実施しております。

  • 薬物療法
     薬物療法とは主にアレルギー反応が生じた場合にその症状を抑える治療であり、例えば抗ヒスタミン薬や、アナフィラキシー反応に対して適応のあるアドレナリン自己注射剤(商品名エピペン)があります。残念ながら現時点では食物アレルギーを直接治療する薬は未だありません。
予防

 現在の医学では食物アレルギーを予防する有効な手立ては無いとされています。以前は、完全母乳栄養や授乳中の母体食物除去(母が卵を除去する等)や離乳食を遅らせる、すなわち消化機能が未熟なうちはなるべくアレルギーとなりうる食材を食べさせないという考え方も存在しましたが現在のアレルギー医療においてそれらの予防効果は無いと結論が出ています。直接食物アレルギーを予防するわけではありませんが、アトピー様の皮膚炎を合併している場合は適切な皮膚疾患治療によって皮膚のバリア機能を正常化し経皮的な食物アレルギー感作を予防するというものが挙げられます。現状では環境因子よりもアレルギー疾患家族歴等による遺伝や体質が重要なファクターを占めていると考えられています。

その他の食物アレルギー病型
  • 新生児・乳児消化管アレルギー
     新生児から乳児期において主に牛乳をアレルゲンとして、嘔吐・血便・下痢等の消化器症状を主体に発症します。通常の即時型食物アレルギーと異なり非IgE依存性のアレルギー反応であるため、発症は非即時型であり牛乳やミルク摂取後24時間以内に発症します。IgE非依存性であるため血液検査で診断することは困難であり、主に食物除去試験での症状軽快と再摂取による症状誘発が診断の手がかりとなります。ミルク栄養児の場合は加水分解乳や豆乳粉ミルクなどで栄養をまかないます。ほとんどの症例で自然治癒が望めます。
  • 食物アレルギーが関与する乳児アトピー性皮膚炎
     乳児期早期では通常の即時型アレルギー症状は呈さずに、乳児アトピー性皮膚炎として発症するケースがあります。全ての乳児アトピー性皮膚炎が食物アレルギーに関与するわけではありませんが、通常のスキンケアと皮膚外用剤治療で難治の場合はこれを疑います。特定の食材の除去試験による改善の有無や血液検査で診断します。
  • 口腔アレルギー症候群
     主に花粉症を持つ患者が果物や野菜を摂取した際に、摂取直後の口腔粘膜に限局して発症する即時型アレルギー反応を指します。機序としては花粉に感作された場合に、その花粉と交差反応を示す食品が原因となります。花粉症と同じく自然耐性の獲得は期待しづらい経過を辿ります。
  • 食物依存性運動誘発アナフィラキシー
     普段はアレルギー症状を呈しませんが、摂取直後に運動することで初めてアレルギー症状を呈するものをいいます。一般的には小麦や甲殻類がアレルゲンの大多数を占め、アレルギー反応は強くアナフィラキシー反応を呈することが多いとされています。各種アレルギー検査(特に小麦ではω-5グリアジン)や経口摂取運動負荷試験での検査があります。治癒は望めないため、発症時の対応薬の常備と発症予防(運動と原因食材摂取の時間をあける等)を行います。

 

アトピー性皮膚炎

概念

 「アトピー性皮膚炎は増悪・寛解を繰り返す掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因をもつ」と定義される慢性の皮膚疾患です。アトピー素因とは「アレルギー性疾患の家族歴や既往歴を持つ、IgE抗体を産生しやすい素因」と言われています。アトピーと言う単語はアレルギーの類義語と言え、アトピー性皮膚炎がアレルギーと密接に関与しているのは想像に難くありません。皮膚乾燥や体質や遺伝子異常などで皮膚のバリア機能が低下し、それによって生じる慢性的な皮膚のアレルギー性炎症、炎症による更なる皮膚バリア機能の低下が本態であると考えられています。

 「アトピー性皮膚炎は増悪・寛解を繰り返す掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因をもつ」と定義される慢性の皮膚疾患です。アトピー素因とは「アレルギー性疾患の家族歴や既往歴を持つ、IgE抗体を産生しやすい素因」と言われています。アトピーと言う単語はアレルギーの類義語と言え、アトピー性皮膚炎がアレルギーと密接に関与しているのは想像に難くありません。

皮膚乾燥や体質や遺伝子異常などで皮膚のバリア機能が低下し、それによって生じる慢性的な皮膚のアレルギー性炎症、炎症による更なる皮膚バリア機能の低下が本態であると考えられています。

診断・検査

 検査は血液検査等のアレルギー検査(IgE、好酸球数、TARC等)を参考に評価し、病勢や診断の参考となり非常に有用ですが診断には必須ではありません。IgEが正常なアトピー性皮膚炎患者も居ます。診断はそれら検査所見や他合併症の有無などを参考に皮膚病変の所見や経過をみて診断します。ちなみにアトピー性皮膚炎における慢性とは乳児では2ヶ月以上、その他は6ヶ月以上と定義されています。

治療

 主に原因・悪化因子への対策、スキンケア、薬物治療があります。

  • 原因・悪化因子への対策
     年齢により多少異なりますが、食物アレルゲンやダニ・ハウスダスト・花粉などの環境アレルゲン、乾燥、汗、汚れ、細菌、掻爬やストレス等があり、環境整備と適切な皮膚清浄が必要です。
  • スキンケア
     皮膚のバリア機能を正常に保つために適切なスキンケアが必要です。適切な皮膚清浄(きちんと石鹸で汚れを落としてしっかり濯ぐ、ただしゴシゴシこすり洗いや熱風呂などで皮脂や天然保湿因子を落とし過ぎないよう留意する)と保湿が大切です。特に保湿は化粧水等の保湿力の弱いものではなく、ワセリン等の保湿力が高くしっかり皮膚バリア機能を補えるものを、入浴後速やかに最低1日1回はしっかり塗布しましょう。ただし季節によっては汗疹等の原因となりますので適宜剤形を調整するのが望ましいです。
  • 薬物治療
     上記の治療のみでは病勢コントロールが不良な場合や、症状が強く早期に症状を抑える必要がある場合に積極的に考慮します。薬物の主体は抗炎症作用のあるステロイド外用剤を使用します。タクロリムス軟膏という免疫抑制 剤外用薬も存在しますが、現行治療で効果不十分な場合などに考慮されるため、現在でもステロイド外用剤が治療薬の主役と言えます。適切な量を適切に塗布するのは勿論ですが、外用する頻度や日数にも留意する必要があります。

     症状が無いか軽微な状態を”寛解”と言いますが、治療によって十分な寛解状態に持っていった以降もステロイド外用剤をやめるのではなく徐々に投与回数や強さを減弱させていき寛解を十分維持した状態で投薬離脱を目指すというプロアクティブ療法があります。従来の症状がある時に適宜塗布というリアクティブ療法に比較すると投薬管理が大変であるというデメリットはありますが、最終的に再発の予防や医療経済的にも効果的であるという有用性が言われ推奨されています。その他の薬物治療としては抗ヒスタミン薬があり、痒みの症状を緩和することが出来ます。膿痂疹などの感染を合併している際は抗菌薬の併用を行う必要もあります。

※ ステロイド外用剤の副作用について

 ステロイド外用剤は全身投与ではなく皮膚の局所投与であるため適切な使用下においては基本的に全身性の副作用は殆ど生じません。皮膚の副作用としては座瘡(いわゆるニキビや吹き出もの)から皮膚の萎縮や血管拡張・紅斑や感染症があります。しかしこれらは総じて小児、特に乳幼児では成人と比較しリスクは低く医師の指導のもと適切な使用を守れば安全な薬であると言えます。ステロイドは怖いという風評が独り歩きしていると感じることが多々あります。ただし長期間ステロイドを使用している場合の急な休薬は副腎機能障害等のステロイド離脱症状を呈する事がありますので、休薬を希望される場合も必ず医師に相談の上で行う必要があります。

 

予防

 アトピー性皮膚炎発症のリスクが高い児を対象に新生児期からの保湿剤によるスキンケアを行うことでアトピー性皮膚炎の予防効果が得られたという報告が本邦においてもされています。

 

気管支喘息

概念

 気管支喘息(以下喘息)は小児喘息と成人の喘息とでは同一の疾患(群)ではありますが、多くの相違点がみられ別々に治療ガイドラインが発行されています。この場では小児喘息の視点から述べることといたします。

 小児喘息は「発作性に起こる気道狭窄によって、喘鳴や咳嗽及び呼気延長を伴う呼吸困難を繰り返す疾患」と定義されています。主な病態としては環境アレルゲンに起因する気道の慢性アレルギー性炎症が原因となり、気道(息の通り道)の狭窄と気道の過敏性を生じ発症するとされています。気道が狭くなることで呼吸が正常にできなくなり喘鳴(ぜーぜーを伴う苦しそうな呼吸)や呼吸困難感を呈したり、気道の過敏性により咳嗽を繰り返します。それらの症状は発作的な増悪を呈することが多く、それを喘息発作といいますが、喘息発作の誘引としてはアレルゲン(ダニ・ホコリ・カビ等)への暴露や感染症(風邪や気管支炎や肺炎等)や物理的刺激(タバコや香水や大気汚染)や運動や気候などがあります。

 喘息は患者数そのものは他アレルギー疾患と同様増多傾向にある一方で、近代医学の発展において最も治療改善が得られた疾患の一つと言われます。以前は喘息死というものが一般的に存在していましたが、その数は激減しました。しかしそれはつまり裏返せば、適切な治療介入がなされなければ喘息死等の重篤な経過を辿りうる疾患であると言えます。そして喘息死は必ずしも重症例で生じているのではなく軽症例や中等症例においても突然の増悪や発作によって引き起こされており、それは喘息治療の重要性を物語っています。

検査・診断

 完全に明確な診断基準はなく、病歴や既往歴や家族歴などの臨床経過と各種検査所見から総合的に判断して診断を行います。検査としてはアレルギー検査や呼吸機能関連検査があります。喘息では呼吸機能検査は重要な要素を占めます。喘息は気道が狭くなることで呼気(息を吐くこと)の機能が可逆的に低下するため、主に呼気の機能を調べます。また可逆性という喘息の特徴を証明するために、気管支拡張薬という喘息発作治療薬を用いてそれによる呼気機能の変動(喘息であれば薬により呼気機能が一時的に改善します)を捉えたり、逆に運動や薬物によって気道の狭窄を意図的に引き起こし気道の過敏性を調べることなどが出来ます。しかしこれらの検査はある程度年長児でなければ正確な検査が出来ないため乳幼児ではどうしてもそれらの検査に頼らない理学所見などで診断せざるを得ないのが現状です。年少児でも施行可能な呼吸機能検査が登場しつつあり、その検査の有用性と運用が期待されています。当院では呼吸機能検査・吸入負荷・運動負荷・気道過敏性検査・呼気一酸化窒素検査を施行しています。

治療

 治療は喘息発作時に対する急性期治療と、長期管理治療の2つに分けられます。

  • 急性期治療
     急性期治療を行うためにまずは喘息発作の察知とその重症度の把握を患者もしくは家族自身が行うことが重要です。呼吸に伴いゼーゼーやヒューヒューと言った音が聞こえたりすれば発作が疑われますし、呼吸が普段と比較して早かったり、肩で息をしていたり、鼻がひくひく動いたり(鼻翼呼吸)、肋骨や鎖骨が呼吸に合わせて凹んだり(陥没呼吸)、唇や爪が白や紫に変色していたり(チアノーゼ)、会話が困難であったり、横になるのを嫌がったり(起座呼吸と言って喘息では寝るより座ったほうが発作時に呼吸が楽になることが多々あります)等の兆候が見られる場合は強い喘息発作が疑われ、速やかに適切な発作時治療介入が求められます。

    まずは発作に伴う呼吸症状・障害を取り除くことを目標とします。喘息発作の原因・増悪となりうる状況の改善(アレルゲン回避や感染の治療)を行いつつ、気管支拡張薬(吸入薬や内服薬)を使用します。それでも改善が乏しい場合は原則として入院管理を考慮しステロイドという強力な抗炎症作用のある薬を全身投与(吸入投与では無効です)する必要があります。それ以上の治療については割愛しますが、集中治療に準じた厳密な呼吸管理と治療の適応を考慮します。

  • 長期管理治療
     長期管理治療は喘息治療で最も重要であり、急性期治療を終え全く自覚症状が無くとも定期的な受診が必要となります。環境整備(アレルゲンや発作要因の除去)を行いつつ適切な投薬(吸入ステロイド薬や抗アレルギー薬)を継続して用いることが必要です。具体的には発作頻度と現在の治療を照らし合わせ、症状コントロールが不十分であれば治療のステップアップを、3ヶ月以上コントロールが良好であれば治療のステップダウンを考慮していきます。

     喘息は前述の通り気道の慢性炎症を本態としているため、低頻度の発作であったとしても発作が生じるということは気道の慢性炎症がくすぶっていることを意味します。その慢性炎症を抑え、発作0を目指すため無症状期にも治療を継続する必要があります。しかしながら無症状期に入ると治癒したと誤解して受診から遠のいたり、児が思春期や反抗期などで薬剤自己管理が不十分となるなどの理由で怠薬し、忘れた頃に発作で受診するといったケースが少なからずあります。

     ステロイド吸入治療については乳幼児や年少児等でもネブライザー(吸入器)やスペーサーなどの吸入補助機器を使用することで十分な吸入治療効果が得られます。

  • その他の治療
     アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎(蓄膿症)や胃食道逆流などの喘息に合併しやすく、それ自体が喘息コントロールを悪化させうる合併症の診断と治療も重要と考えられます。
予防

 他アレルギー疾患と同様に遺伝等の個々の素因が発症要因の多くを占めており、明確で有用な予防については今後の更なる研究が必要です。現時点では適切なスキンケアやタバコの煙からの回避・室内環境整備によるダニ暴露からの回避が有効と考えられています。ペットの飼育については賛否両論ありますが、アレルギー疾患の家族歴があるなどのハイリスク児に於いては、有毛ペット(特にネコ)の飼育の回避が推奨されています。

 

アレルギー性鼻炎・花粉症

概念

 アレルギー性鼻炎は鼻粘膜の1型(即時型)アレルギー性疾患で、原則的には発作性反復性のくしゃみ、鼻漏、鼻閉を3主徴とする疾患と定義されています。通年性のアレルギー性鼻炎と季節性のアレルギー性鼻炎(主に花粉症)があります。アレルギー性鼻炎は増多傾向にあるとともに、低年齢化も言われており、今は小児科診療でも見かけることが増えました。程度の差はあれども自然治癒は期待しにくい疾患です。

検査・診断

 鼻炎症状の経過を始めとする病歴や家族歴などの問診、鼻腔粘膜所見と各種アレルギー検査から診断を行います。季節性のアレルギー性鼻炎であれば発症時期とその時期に多い花粉を知ることでアレルゲン特定を優位にすすめることが可能となります。

治療

 アレルゲン暴露からの回避と薬物治療と手術治療と免疫療法とがあります。アレルゲン暴露回避に関しては、環境整備(防ダニや花粉症に対する洗濯物の部屋干し等)とマスク・メガネ・帽子着用や適宜洗顔や鼻洗浄(生理食塩水や市販の鼻洗浄液などを使用)があります。薬物に関しては内服薬や点鼻薬や点眼薬を症状に合わせて組み合わせて使います。花粉症の場合は原因の花粉が飛散するよりも少し前に投薬を開始することがより良いとされています。手術治療は手法は様々ですが小児では一般的ではないため割愛します。

 新たな治療法として免疫療法があります。免疫療法は食物アレルギーの項で少し触れましたが、アレルゲンに人為的に暴露させることで体内で即時型アレルギー反応が生じなくさせる(あるいは減弱させる)という治療法です。食物アレルギーではまだ研究段階の治療法でしたが、アレルギー性鼻炎においては舌下免疫療法の登場とその安全性と有効性から現在では一つの選択肢として推奨される治療法となっています。本邦では2014年にスギ花粉抗原の舌下投与剤が、2015年にダニ抗原の舌下投与剤が発売されました。特徴としては1日2、3分間をかけてご自宅で舌下投与を毎日行いこれを年単位で行います。自宅で出来るという手軽さはあるものの、毎日・年単位で続けるという長丁場であること、治療効果に個人差があること、治療を終了すると再発する場合があること等のデメリットは存在します。しかし対症療法が主体であったアレルギー性鼻炎において、治癒を期待できる新たな治療法として現在注目されています。当院ではスギ花粉・ダニの舌下投与剤を取り扱っております。

 

小児循環器疾患

 小児期のあらゆる循環器疾患をあつかっています。下に代表的なものをあげます。

  • 動脈管開存
  • 心室中隔欠損
  • 心房中隔欠損
  • ファロー四徴
  • 両大血管右室起始
  • 完全大血管転位
  • 修正大血管転位
  • 単心室
  • そのほか複雑先天性心疾患

 小児循環器疾患はほとんど先天的に構造異常を合併している“先天性心疾患”です。その他にも心筋症・心筋炎や小児肺高血圧など成長してから発症してくる疾患もあります。月1回、奈良医科大学小児科心臓グループと合同カンファレンスを行い、奈良県下の小児循環器医療の発展に貢献したいと考えております。

 

動脈管開存のカテーテル治療

  • 胎児期には胎盤からの母体血を胎児の体に効率よく流すため動脈管(古くはボタロー管と呼ばれていました)という血管が大動脈と肺動脈の間にあります。通常は出生後自然閉鎖をしますが、残ってしまう患者さんがいます。心臓の負担になるような大きさのものは新生児期に外科手術で治療が必要ですが、軽度のものですとそのまま様子を見ていきます。ただし、感染性心内膜炎の危険性がありますので体格の発育を待ってカテーテル治療を行っています。当院は小児科単独ではAmplatzer社製動脈管閉塞栓の認可施設ではありませんので大きな動脈管については循環器内科と協力して行いますが、小さなものはコイル塞栓で問題なく閉鎖術を行っています。

 

先天性心疾患のコイル塞栓術

  • チアノーゼ性先天性心疾患患者さんでは肺血流が乏しいことが多くそれを補う体肺動脈側副血行が発達することがしばしばあります。心内修復術後ですと、それらの血流は心臓の負担となりますし、将来的な喀血のリスクとなることがありますのでコイル塞栓を行っています。
  • そのほか、冠動静脈瘻や血管腫などのコイル塞栓も行っています。

 

先天性心疾患

  • 先天性心疾患の発症率は100人出生に1人といわれていて、決して稀ではありません。先天性心疾患の全例に治療が必要なわけではなく、心室中隔欠損のように自然経過で改善するものもあります。しかし、中には新生児・乳児期に手術介入が必要なものもあります。
  • 多くの先天性心疾患は二心室修復といって、正常心臓構造に近い形に修復できますが、フォンタン手術(一つ心室をより有効につかって、低酸素血症を改善させる術式)を選択する場合もあります。どんな術式が患者さまにとってよいのか相談しながら、心臓外科医と連携して選択してゆきます。
  • 先天性心疾患の患者様は、手術のあとも慎重の経過観察が必要です。心臓に加えた切開のあとが不整脈発生の原因となったり、弁逆流が出現して心臓に負担がかかったりすることが多いためです。先天性心疾患の患者さまの心不全は、一般成人の心不全と異なり、右心室負担がかかることが多いです。先天性心疾患患者様に発症する右室不全の管理には専門知識を要します。

 

小児肺高血圧

  • 心臓に疾患がなく明らかな原因を認めない、特発的に生じる肺高血圧=特発性肺動脈性肺高血圧(iPAHと略します。以前は原発性肺高血圧と呼んでいました)を中心にお話し致します。
  • 肺高血圧は、ただ単に「肺の血圧が高い」と言っているに過ぎず、その原因は、心疾患のみならず呼吸器、肝臓、膠原病、AIDSほか多岐に渡り患者さんも多様です。iPAHもその一つです。ただ共通して言えることは、多くの場合非常に生命予後が悪い(=命に関わる)ということです。iPAHはほんの20年ほど前まで、診断から3年で半数の患者さんが亡くなる、とても恐ろしい病気でした。
  • ところが1999年に持続的に点滴をする治療法/治療薬が使えるようになって以降、iPAHをはじめとする肺高血圧の治療成績は劇的に改善しました。その後、薬理機序の異なる複数の新しい治療薬も使えるようになり、今では肺高血圧は、必ずしも将来を悲観すべき疾患ではなくなってきました。
  • ただし、今でも十分注意すべき疾患であることに変わりはありません。診療には十分な知識と経験のある医師・医療機関が携わるべきです。また希少な疾患であり、上記薬剤の多くは子どもに適応がない(公式には使用を許されていない)ため、治療のエビデンス(証拠/治療の学術的な拠り所)を確立し適応を得るために、小児の患者さんに対しては、登録の上しっかりデータを残しながら上記治療薬を使用する必要があります(これを「治験」と言います)。
  • 肺高血圧治療に対する十分な知識と経験が私たちにはあります。また治験を行う他施設と連携を取りながら、エビデンスの確立にも寄与したいと考えております。

 

心筋症/心筋炎

  • 拡張型心筋症は、心筋が菲薄化し、心臓が収縮する力に問題があります。近年はβ遮断薬や、アンギオテンシン変換酵素阻害薬等の内服治療により、多くの方が急性心不全から慢性期に移行できるようになってきました。中に、心臓再同期療法といって、ペースメーカーによる心不全治療によく反応する方がおられます。
  • 肥大型心筋症は、心筋が肥大し、心臓が広がる力(拡張能)に問題があります。病初期には無症状で、学校検診の心電図異常で初めて肥大型心筋症の診断に至る方もおられます。無症状であっても、初発症状が心室細動による失神や突然死であることもあり、注意が必要です。また、病態が進行すると、心不全症状が出現し拡張型心筋症に移行することもあります。
  • 心筋炎の多くはウィルス感染によりおこりますが、その症状は様々です。重度の心不全を呈し急激な進行で死に至る方もおられますし、気づかない内に罹患して自然に治ってしまわれる方もおられます。心筋炎に罹患後、数週間の経過で改善がみられる場合もありますが、そのまま拡張型心筋症となる方もいらっしゃいます。完全房室ブロックで、突然脈がおそくなって見つかる方もおられますが、完全房室ブロックが主体で、心臓の動きが良好な場合は、完全房室ブロックは数週間の経過で改善することが多いです。

 

心臓カテーテル検査

  • 先天性心疾患の病状の評価については医療の進歩により様々な非観血的(痛みを伴わない)検査での評価が可能になってきました。しかし、疾患によっては肺高血圧の有無や血管や弁の狭窄評価のため、心臓内の各心房や心室、血管内の血圧を直接計測する必要があります。その時には入院の上、足の付け根や腕、場合によっては首の血管から1mm程度のカテーテルという細い管を心臓まで通して計測する心臓カテーテル検査が必要となります。
  • 心臓カテーテル検査では以上のような圧測定のみだけでなく、個々の部位の造影検査も可能です。川崎病後の冠動脈異常の評価では冠動脈全体の評価が可能ですので、心エコーでは評価できない末梢の冠動脈異常を検出するために必要な検査です。
  • 当院では以上のような治療方針の決定に必要な時にのみ心臓カテーテル検査を行っております。また、同時にコイル塞栓やバルーン血管形成術などを行う場合もあります。
  • 小児の場合は静脈麻酔と局所麻酔を組み合わせ、寝かせた状態で検査を行います。中高生以上の場合は局所麻酔のみで検査を行うのが一般的です。
  • 検査入院は基本的に2泊3日で、入院翌日に行います。
  • 検査時間は一般的な成人よりも準備などに時間がかかりますので2-3時間です。
  • 傷はやや大きめの注射の後程度で、皮下血種の程度にもよりますが検査後の痛みは軽いものです。学校などの参加も退院翌週(ほとんどは翌日)から可能となります。
  • 当院では開設以来9,000例以上の小児の患者様に心臓カテーテル検査を行っており、ほとんどの患者さんがトラブルなく退院されています。

 

心エコー

  • 先天性心疾患は心臓の構造異常の評価が重要になります。以前は心臓カテーテル検査のような観血的(痛みを伴った)検査でしか判明できなかった異常も心エコー検査で判断が可能となることが増えてきております。
  • また、心筋症、川崎病などの評価では正常な解剖学的構造の心臓ですが、心臓の動きや冠動脈の評価が重要になります。この場合も心エコー検査による評価が重要になっています。
  • 当院では6ヶ月以上から幼児のお子さんでは眠り薬を事前に飲んでおいてから、それ以下の赤ちゃんでは授乳後入眠時に、それ以上のお子さんでは起きた状態で検査を行っています。
  • 年間1,000-1,500例の検査を行っています。

 

胎児エコー

  • 先天性心疾患をお持ちのお母さんや糖尿病母体などの先天性心疾患の赤ちゃんの出生リスクがやや上昇する場合、当院産婦人科で相談いただいた患者さんでのみ年間約10-20例で胎児心エコー検査を実施しています。基本的には20週から32週の間に行っています(20週以前/32週以降は診断確定困難なため)。
  • 赤ちゃんの心臓病が発見された場合、小児循環器科医師による詳しい説明をさせていただき、今後の方針についても産婦人科と合同で、当院での分娩またはより高度な医療施設での分娩か検討しています。
  • ご希望の場合、お母さんの当院産婦人科受診での相談が必要ですので、受診中の産婦人科先生と相談ください。

 

小児科 小児不整脈

 以下の疾患をあつかっています。

  • 発作性上室性頻拍
  • WPW症候群
  • 心室性期外収縮、心室頻拍
  • QT延長症候群
  • カテコラミン誘発性多形性心室頻拍
  • その他の小児期発症のチャネル病
  • 完全房室ブロック
  • 洞性徐脈
  • 先天性心疾患合併不整脈

 基礎疾患のない、小児期に発症する不整脈は多くの場合治療を必要としません。しかし、中に治療が必要なものもあります。当科では、治療が必要な患者様を見極め、適切な治療をおこなってゆきます。不整脈治療は、薬物治療・カテーテルアブレーション治療・デバイス治療(ペースメーカー)の3本柱で行います。

 

刺激伝導系

  • 心臓の中には刺激伝導路といわれる電気の道があります。洞房結節から電気信号がはじまり、心房筋に伝導して心房筋を収縮させたあと、房室結節を通して心室筋に伝導します。心房筋や心室筋は電気信号を伝導することができますが、心房筋と心室筋の間は伝導せず、心房筋と心室筋の間で電気信号を伝導することができるのは房室結節のみです。正常状態で、刺激伝導路を通る、電気信号の数(心拍数)をきめているのは洞房結節です。
  • 心電図はこの心臓の中を通る電気信号を二次元の図で表現したもので、P波、QRS波、T波の成分があります。

 

発作性上室性頻拍

  • ほとんどの場合は房室結節回帰性頻拍か房室回帰性頻拍です。
  • 房室結節回帰性頻拍がみられる患者さまは、房室結節内に速伝導路と遅伝導路の二つの伝導路をもっています。期外収縮をきっかけに、電気信号がこの二つの伝導路をくるくる回って頻拍がおこります。
  • 心房筋と心室筋の間に房室結節以外に電気刺激を通すことができる組織がある方がいらっしゃいます。これを副伝導路といいます。この副伝導路があるために、心房筋と心室筋の間には二つの伝導路があることになり、この二つの回路を介して、心房筋と心室筋の間を、電気信号がくるくる回ります。これを房室回帰性頻拍といいます。
  • 治療法は3つです。
    1. 発作の頻度が少ない、おこっても患者さまにあまり負担にならない場合、外来で経過観察のみします。
    2. 発作頻度が頻回である、頻度が少なくても発作中かなりつらいという場合には積極的な治療介入が必要です。現在は最初におすすめするのはカテーテルアブレーションです。カテーテルアブレーション治療は心臓の中にカテーテルを挿入し、発作の原因となっている組織を同定(房室結節回帰性頻拍の場合は遅伝導路、房室回帰性頻拍の場合は副伝導路)し、そこを焼灼する治療です。カテーテルアブレーションでは完治が望めます。
    3. カテーテルアブレーションを希望されない場合には内服薬でコントロールします。薬の内服の仕方には2種類あります。発作がおこったときに、発作を止めるために頓用で内服する方法と、毎日お薬を内服し発作がおこらなくする方法です。いずれにしろ、発作の原因を除去しているわけではなく、発作を抑えているだけなので、この場合完治は望めません。

 

WPW症候群

  • WPW症候群は心電図上にΔ波がみえるものをいいます。Δ波とは、心房と心室の間にある副伝導路を、心房から心室に伝導する電気信号を表現しています。WPW症候群のほとんどの患者さんは無症状ですが、中に病的な頻拍(脈拍が早いこと)をおこしてくる場合があります。その頻拍には2種類あります。一つは発作性上室性頻拍です。もう一つは大変稀ですが、心房細動を合併することによりおこる偽性心室頻拍で、突然死することがあるといわれています。
  • 房WPW症候群で、無症状の場合には治療対象にはならず、外来で定期的に経過観察することになります。発作性上室性頻拍(房室回帰性頻拍)がみられるときの治療は“発作性上室性頻拍”の項をご覧ください。

 

心室性期外収縮、心室頻拍

  • 心室性期外収縮は、洞結節からの電気信号より早いタイミングで、心室から電気信号がでて心室が収縮するという現象です。この心室性期外収縮が三連発以上みられた場合、心室頻拍と呼ばれます。通常、心臓病を合併していない方でも日に数発は心室性期外収縮がみられることはあります。学校検診や軽度の症状で、小児期に心室性期外収縮が通常より多い回数で出現し、病院受診をすすめられる場合があります。ほとんどの場合は治療介入の必要なく、約半数の方は思春期前後で消退することも知られています。しかし、なかに死に至るような不整脈(致死性頻拍)を発症してくる前兆である場合がありますので、経過観察や精査が必要な患者さまがおられます。心室性期外収縮が、下の4つの複数またはいずれかを満たしている場合、注意が必要です。

    1. 頻発している
    2. 連発がある
    3. 運動で抑制されない
    4. 多形性である

 

QT延長症候群

  • QT延長症候群には先天性と後天性があります。小児期にみられる患者さんのほとんどは先天性です。
  • 先天的に心電図上のQT時間(QRS波の始まりから、T波の終わりまでの時間)が長い患者様です。遺伝子異常の関与がいわれていて、QT延長症候群と診断された人の約80%に、QT延長症候群に関与する遺伝子が同定されます。
  • このQT延長症候群の患者様は、心室細動(とても速い電気信号のため、心臓のポンプ機能が十分に働かず、血液が心臓から送り出せない状態になる)のため、失神や突然死などをおこしてくる確率が通常の人より高いといわれています。無症状の方でも、心電図波形から将来、心事故を発生する可能性が高いと判断した場合には積極的な治療が必要です。治療の中心はβ遮断薬です。
  • 学校検診で、QT延長症候群かどうか判断のつきにくい境界領域QT延長を指摘される場合があります。当科では、その心電図所見に応じて、精査を行っております。その後、どのように診てゆくか、ご家族と相談しながら方針を決めています。

 

カテコラミン誘発性多形性心室頻拍

  • 運動により、ある一定の心拍数をこえると、心室頻拍をおこしてくる疾患です。心室頻拍は、いろんな形を呈していて(多形性)、心拍数が早いため、心臓の血液を送り出すポンプ機能が十分に働かず、失神をおこしたり、突然死の原因になったりします。
  • 5歳頃からの運動に関係した繰り返す失神というのが典型的な症状です。てんかんと診断されていたり、実際にてんかんを合併していたりする場合もあります。
  • 治療は、運動制限とβ遮断薬の投与となります。近年、“フレカイニド”という抗不整脈薬が有効である場合があることが報告されています。

 

その他の小児期発症の心臓チャネル病

  • QT延長症候群やカテコラミン誘発性多形性心室頻拍は、心筋細胞のイオンチャネルの異常によりおこるとされていて、“チャネル病”といわれています。心臓のチャネル病は、小児期の発症は少ないですが、他にもブルガタ症候群や、進行性心臓伝導障害があります。

 

完全房室ブロック

  • 心房と心室の電気的な中継地点である、房室結節での伝導がまったく見られない状態です。
  • 小児期にみられる完全房室ブロックの要因には先天性と後天性があります。
  • 先天性完全房室ブロックは胎児期や新生児期早期に診断されます。経過中に拡張型心筋症を発症する方がおられます。
  • 幼児期や学童期に偶然完全房室ブロックを指摘される方がいます。無症状で、いつ発症したのか不明の場合が多いですが、気づかない内に罹患した心筋炎が関与しているのではないかと推測されます。
  • 完全房室ブロックであっても、接合部からの補充調律が十分にあれば、経過観察のみです。しかし、補充調律が十分でない場合、心臓に負担がかかっている場合にはペースメーカー植え込みの適応となります。

 

先天性心疾患合併不整脈

  • 小児および成人期の先天性心疾患患者さまは、そうでない患者様より、不整脈合併の頻度が高くなります。原疾患の解剖学的な刺激伝導系の異常、心臓に対する影響の程度や加齢によりその頻度は異なります。
  • 最も多い不整脈は心房内回帰性頻拍とよばれるものです。心房負荷による瘢痕や、手術の既往により切開線やカニュレーション痕が電気的な障壁となって、心房内を電気信号がくるくる回る状態です。
  • 不整脈の原因を見極め、それに応じた治療を選択します。

 

カテーテルアブレーション

  • カテーテルアブレーションは頻脈(脈が速いこと)治療にかかせない手技です。
  • 脚の付け根、首、肘に存在する大きな静脈、動脈にシースを挿入し、そこから電極付きのカテーテルを4-5本、心臓内に留置します。カテーテルの先から電気信号を送ることによって、問題となっている頻脈を誘発します。そして、その頻脈の心臓の中の電気信号の地図をつくって、頻脈の原因となっているところを探します。多くの場合は発作性上室性頻拍のように、電気の回路が存在しますので、その回路の一部の組織を焼灼(アブレーション)することで、電気信号が心臓のなかをくるくる回らないようにします。組織の焼灼は、高周波のエネルギーを使って、カテーテルの先端を50-60℃にあげ、やけどをおこさせることで行います。

 

ペースメーカー治療

  • ペースメーカーには、これまで皆様がご存じの徐脈に対しての治療としてのペースメーカーと、致死性不整脈に対する植え込み型除細動器、心不全に対する心臓再同期療法用のペースメーカーと3種類あります。
  • このペースメーカーのほとんどの機種は成人用につくられていますので、小児でペースメーカーが必要な場合には植え込み方法と管理の方法に工夫が必要です。
  • 小児および先天性心疾患のペースメーカーの植え込み方法は大きくわけて2種類あります。一般成人と同様に、静脈から心臓の内側にリードを挿入する経静脈心内膜アプローチ、経胸壁心外膜アプローチです。それぞれ長所・短所があり、患者様の年齢、病態に応じて選択します。

 

小児科 成人先天性心疾患

  • 先天性心疾患の患者さんはほとんどが一生慢性疾患としてその病気と付き合わなければなりません。患者さんが成長していくに従い、その生活も変わっていきます。就学から就労、女性ならば妊娠出産、成人期に発症する可能性のある病気などもあります。心臓外科手術/内科治療の進歩によって、先天性心疾患の子供のほとんどが成人期まで到達し、初期に手術した患者さんは40-50歳代になっています。先天性心疾患患者さんの半数が成人である状況が間近になっているのが現状です。ですので、いつまで小児科で管理していくのかが問題となります。
  • 先天性心疾患において根治手術と呼ばれるものは、ごく一部を除いて将来的にも問題がなくなるものではありません。
  • 再手術は必要ないまでの中等度の残存病変があることもありますし、内服加療を継続しなくてはならないこともあります。また、成長とともに再度病状が進行し、再手術を検討することもあります。
  • また、成人期になると加齢による変化で病状が変動することや不整脈の出現の可能性も出てきます。
  • 根治手術の適応外の患者さんでは残存するチアノーゼとその合併症、心不全傾向の進行、不整脈の出現と成人期にも引き続き管理が必要ですし、心臓以外の病気に関してそれぞれの専門医師とのコーディネイトが大変重要になります。
  • 先天性心疾患の患者さんで15歳あるいは18歳を超えた患者さんを成人先天性心疾患患者さんと呼び、当院ではその病状に応じ、先天性心疾患センターと呼ばれるチームで診療を行っています。
  • 毎週合同カンファレンスを行い、小児循環器医と心臓外科医、循環器内科医で今後の治療方針を検討しつつ、最善の医療を考えています。そして、病状のある程度落ち着いておられる患者さんは積極的に循環器内科への移行を行っています。
  • また、小児科担当の成人先天性心疾患外来ではその移行を円滑に行うため、患者さんとご家族のサポート(思春期の患者さん自身が病気について管理できるような外来環境づくりと指導)を行い、生活基盤の移行や患者さんご本人の自覚などを基準にお近くの循環器内科病院や当院循環器内科への紹介のタイミングを相談しています。
  • 病状の不安定な患者様の場合は、上記のカンファレンスでさらに検討をしつつ、チームでの診療を行っています。

 

小児がん

 当院は近畿ブロック小児がん連携病院に指定されています。近畿ブロック小児がん拠点病院である京都大学医学部附属病院と連携し、小児がん患者さんの長期フォローアップを担当しております。

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